奈良大和路の花の御寺 長谷寺

「旅する」

花の御寺へ

季節が変わるたびに訪れたくなる場所がある。奈良県桜井市にある長谷寺だ。

境内は初瀬山の山麓から中腹に広がり、1年を通じて様々な花が咲き誇ることから「花の御寺」と呼ばれている。

春は桜や牡丹、夏には新緑と紫陽花、秋には紅葉、冬になると雪景色や冬牡丹が楽しめる。

どの季節に訪れても、そこにある自然が四季を感じさせてくれ、心に安らぎを与えてくれる。そんな場所だ。

今回、私が訪れたのは秋の終わり。山肌がオレンジ色に染まり、足元には落ち葉が広がる。

入り口で入山料を支払い、まず目の前に見えてくるのが、長谷寺の総門である仁王門だ。
仁王門を厳かな気持ちでくぐり抜けると登廊が続いている。

この登廊は本堂まで続き、全部で399段の緩やかな階段になっている。一段一段踏みしめていくと適度な疲労感があり、いい運動にもなる。

本堂までは、ゆっくり歩いて10分ほど。
その間も、鳥のさえずりや、木々の香りが私を癒してくれる。

十一面観音菩薩

登廊を見事に踏破すると本堂にたどり着く。国宝にも指定されている本堂には、高さ10メートルを超えるご本尊、十一面観音菩薩が鎮座している。

国内最大の木造の仏さまで、その威風堂々とした姿には、毎度のことながら圧倒される。

そして、お参りを済ませた後に、ぜひ見てほしい景色がある。それが、本堂の舞台からの眺望だ。

京都の清水寺と同じような造りの張り出した舞台からは、境内を一望できるとともに周囲の山々を見渡すことができる。

この景色が、ここまで登ってきたご褒美だ。
木々の緑色の中に、春は桜の淡いピンク色、秋には紅葉のオレンジ色といったように、その季節によって異なる色合いを見せてくれる。

ここで大きく息を吸って、新鮮な空気を体に取り入れる。そしてゆっくりと息を吐いて日頃の疲れを外へ出す。
贅沢な時間だ。

本堂を抜けて少し歩くと鮮やかな朱色が映える五重の塔が見えてくる。

戦後に初めて建てられた五重の塔で、「昭和の名塔」と呼ばれているそうだ。

そして、帰りも同じ道を通るのではなく、奥の院がある散策路を歩くのが私のおすすめのルートだ。

様々な花が咲き、木々が生い茂る森の中を歩くすがすがしさは格別だ。

長谷寺名物の草餅

最後に、参道に並ぶお土産屋さんで名物の草餅を買って帰る。


よもぎを練りこんだお餅は適度な弾力があり、あんは甘さ控えめで何個でも食べられそうな味わいだ。心もお腹も満たされて帰路につく。

また次の季節に訪れるのが楽しみだ。

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